「じゃ,またね~っ。あ。そうだ。私明日からはあんまり来れないから」
「いいよ別に」
「あっ照れてる? いいんだよ会いたいって言ってくれても。まあ会えないけどね!」
「なんだそれ」
戸惑い,何かを隠し。
終いには肩の力と表情を崩した俺は,弾けるように去っていくその人の背中を見つめた。
彼女はすぐにはぐらかすから。
悪気がない顔で隠すから。
受け取る言葉を,片手にぶら下げたらいいのか,両手で抱えなくては持てないものなのか。
確信して判断できない。
だから俺は,その背中を,笑って,気の抜けた顔で見送ってしまう。
俺は既にきっと沢山預けているくせに,その両手に少しずつ積み上げているくせに。
気付くことが出来ないのだ。
彼女の孤独と,葛藤と,彼女が隠す全ての感情に。



