夕日みたいな君と,時間を忘れて手を繋ぐ。

もう一度振り返って,お父さんに文句を言う2人を見る。



「このん。あんたは俺達と遊びに来たんでしょ。あとこのんのアイスは俺が貰ったから」



ふんっと振り返ってプールサイドへ寄っていく春陽くん。

ぽしゃっと落ちて,私を見つめた。



「ほら。次は負けないから。文世,そいつ押せ」

「おっ……ってえ!!」

「ほら跳べって早く!!!」



飛び込み禁止の看板が視界に映る。

私はしゃがみ込んでぴょんと跳んだ。

ぱしゃんと響く。

水音の向こうで



『押すわけないだろ』



と呆れている堤くんの声が聞こえた。

きらきらぽこぽこ。

心の浮足立つ音。



「あははっっ」



ぱしゃと顔を出す。




「ねぇ,ほんとにまだやるの?」



私は驚いた顔と目が合って尋ねた。



「……当たり前でしょ。子供じゃないんだからただ浮いてるなんてごめん。それにまだ勝ってないし」



ツンツンと言葉が返ってくる。

そんな横顔に,私はえいと水をかけた。



「冷たっ。なにすん」

「こーいう遊び方もあるみたいだけど?」

「そっれこそガキでもあるまいし」



今度は堤くんにぺっとかける。

彼は少し考えて,それよりもさらに弱い水量で私へと返した。

ぱしゃぱしゃと無言で応酬を繰り返す。

そんな状況に堪えが利かなくなって,私はまたあははと笑った。



「普通に笑えるんじゃん,このん」



むっとした春陽くんに,え? と反応する。

少し考えて目線をそらすと,口元を隠すように頬を擦って



「まーね」



とはにかんでみせた。



「次はクロール!!」

「春陽,三好が危ないって」

「ふふふ。非日常〜!!!」



楽しい楽しい,夏を先取りした日となった。