夕日みたいな君と,時間を忘れて手を繋ぐ。

理解できないというように,皆等しく息を呑んだ。

当事者である春陽くんまでも,目をまんまるにして私を見た。



「そんなのいつまで持つか」

「だから。少しずつでも頑張ってくれるから。もし,やっぱり無理って日があっても,もう少しだけ待って下さい。春陽くんは,本当はもう,大丈夫になれるんです」

「君は,君はどうするんだ。毎日毎日春陽に構って,君の時間はどうなる」

「どうにもなりません」



私は乾いた喉に,頂いたお茶を流す。



「春陽くん,私を信じて」



絶対に,不幸にはさせないから。



「行くのか? 春陽」



春陽くんは顔を歪めて,しばらくすると諦めるように頷いた。



「女の子にここまで言わせて,適当言ってるんだったら」

「大丈夫です。大丈夫,だから。春陽くんを脅かさないで下さい。私が責任を持ちます。彼の卒業と,望むのであれば進学も」



春陽くんは,勉強が好きなんだと思う。

引き出しの中にあった満点の答案は,彼の誇りだったのではないか。

実際には私が卒業まで傍にいることは出来ないけれど,それと同等の日常や自信を取り戻すことは,難しいことではないと,そう思っていた。