夕日みたいな君と,時間を忘れて手を繋ぐ。

「大方,うちの文世を心配して来てくれたのだろう」



私は箸をことりと静かに置いて,その瞳を追うようにゆっくりと言葉を返す。



「間違いではありません……ですが,私が来たのはただ,友達に会いたいと思ったからです」



そんな態度が気に入らなかったのだろうか。

お父さんは眉をぎゅっと狭めて口をつぐんだ。

今まであったどんなタイプとも違うお父さんに,私も少しだけ気を臆する。

でも私は他所の家の子だから,きっと悪いようにはされないと少しだけ高を括った。



「春陽は,どうだ。学校で」



私はその言葉に,数秒間をおいた。

適当な嘘をつくような場ではないと,そう思ったからだ。



「…教室が違うので。ただ,春陽くん自身はとても……優しくて素敵な人です」

「何故,学校にいかない? 春陽」



次に言葉を向けたのは,春陽くん。

最初からそれだけが聞きたかったのだろう。



「……」

「春陽!!」

「お父さん」



キッチンから様子を見ていたお母さんが,おろおろと出てくる。

そんなお母さんを遮るように,お父さんはまたも口を開いた。



「いつまでも勝手に閉じこもってるお前が,家に友達を呼べるとでも思ってるのか??」



苛立ち,焦り,案じ。

募っていくように,言葉を向けられる春陽くんは,ただ過ぎ去る風を待つように黙って父親を見ている。