「三好ちゃん……だったわよね……? お父さんは何て?」
「あ……好きにしていいと。迎えは父が来てくれるので,お夕飯だけいただいてもいいでしょうか」
リビングに戻り,顔をあげた途端。
ブーブーと2度スマホが振動し,共鳴するようにどくんと心臓が跳ねる。
私はスマホを隠すようにぎゅっと抱き締めて,俯いた。
「それはお父さんには悪いことをしたわね。すぐに仕度をするから,是非食べていってちょうだい」
「ありがとうございます」
反射的に顔をあげ,にこりと微笑む。
そのままトランプを片付ける春陽くんを見れば,その表情は暗く。
まるで今の私をみているかのように,瞳は静かに揺れていた。
「三好さん,アレルギーはない? 文世,春陽,お皿運ぶの手伝って」
ほっそりした身体のお母さんが発する明るい声は,失礼にも異質に感じてしまう。
手伝うと声をあげるべきか悩んでいると,堤くんはぽんと私の肩を椅子に押すようにして軽く叩いた。
……スマートだ。
一瞬肩へ感じた熱にほっとして,私はふぅと目を閉じた。
"三好 好暖"side 終



