今日はすき焼きなんて,家族の会話。
良かったらなんて,息子の友達へのお誘い。
きっとごく普通の,家庭の会話。
ふいに泣きそうになりながら,私は廊下へと逃げ。
『今日は食べて帰ります。直ぐに帰るから,心配しないでね。たまには少しくらい,ゆっくりしてて』
お父さんへ,一方的な連絡をした。
「そういえば父さんは?」
「どこか寄りたいって。だから私だけおろして貰ったの」
「……ふーん」
「すき焼きの材料足りる?」
「ええ,たまたまだけど沢山買っておいたの。明日の分まであると思うわ」
私の頭上の電気が切れる。
頭を揺らすとまたオレンジに光って,隔離した向こうの会話を聞いていた。
その中に,1人そっけない反応だけをする春陽くんがいて。
少しだけ,心配になった。



