夕日みたいな君と,時間を忘れて手を繋ぐ。

「「スピードっ」」


しゅったったっ。



「うあっ」

「はい,終わったよ。これで全部出せても引き分けだね」

「するするしてて気持ち悪い。何でそんな勢い強くもないのに何回やっても勝てないの」

「さあ,年の功かな」



なんて冗談を交えながら,私たちは何故かカードゲームをしていた。

2人ずつしか遊べないから,放置されていた堤くんを交えて,またババ抜きに逆戻りする。



「んーこっち? そうでしょ。堤くん,ばば持ってるでしょ。それで多分,右側3枚は安全だね」

「……すごい。当たってる。何で分かったの??」

「2人の利き腕だとか,性格だとか。あとは目をみてれば分かるよ。トランプのプロだからね,私」



そんなことない。

久し振りで,確かに向いてはいたけど。

そんな軽口を叩くのが,とても楽しかった。

早く早くと,私のカードを引く春陽くんを子供みたいに急かしてしまう。



「このん,揃うカード真剣に考えてるから待ってってば」



言葉通り真剣に見つめている春陽くんを見て,私はくすくすと笑った。

その瞬間,堤くんの動きが停止する。

ああ,名前。

まだ堤くんには教えていないんだった。

公園であっている間は,ほんとはそんな予定も無かったんだけど。



「堤くんは三好って呼んでくれるでしょ? 紛らわしいから,名前で呼んでって言ったの」



軽く風に音をのせる。

そうゆう設定って事にして,私は念のためフルネームを知っていて貰うことにした。

やっぱり,名前で呼んで欲しかったけど。

名前で呼べないことと同じ様に諦める。



「そうなんだ」



曖昧で困ったような声が,数秒遅れて反応した。



「文世,次」



ようやく引くカードを決めた春陽くんは,堤くんへずいっと押し付ける。



「あーはいは……」