ーーーー"堤 文世"side終ーーーーー
ーーーー"三好 好暖"sideーーーー
「わあっ,すごい! 意外だな~」
「もっと他にないの」
素直で失礼な反応をしてしまった私。
春陽くんの目の前に置かれたのは,醤油の匂いのするチャーハンだった。
「晩飯食えなくなっても困るだろ」
ほかほかとしたご飯に,私のお腹もぐうとなる。
「ねえねえ堤くん」
ほんとうは文世くんって呼びたい。
だけど最初に春陽くんの前で名字呼びをしてしまった手前,そのままで呼び掛けた。
その声には少しの期待も込もってしまって……
「一応もう1人分あるけど……インスタントの方がいい?」
そう顔をそらした堤くんは,照れているように見える。
「ううん。私も頂いてもいい?」
私がそう頼めば,春陽くんと同じお皿が直ぐに出てきた。
「頂きます」
そうわくわくと手を合わせると,前に座る春陽くんと目が合う。
思わず微笑めば,春陽くんは1人で固まっていた。
「ほら,冷めちゃうよ」
促すと静かに,もくもくとチャーハンを食べ始める。
「やっぱり足りない」
私の2倍のスピードで平らげて,春陽くんはまた文句を言った。
だけどそれは照れ隠しみたいなもので,堤くんとコミュニケーションを取るために必要な物なのだと思う。
私が食べちゃって悪かったかな。
そう思いながらも,私は食べ終えた春陽くんに続いて,全て完食した。



