ーーーー"三好 好暖"side終ーーーー
ーーーー"堤 文世"sideーーーーー
何をしているのか,何を話しているのか。
扉一枚隔てただけで何も分からなかった。
もどかしく思いながらも,彼女が開けてくれるまでは忠犬のごとく待ち続けるしかない。
あまりの肌寒さに着替えたり,毛布を運んだり,昼にはカップラーメンをすすったり。
どれも出来るだけ時間を掛けないように移動しながら,俺は何度も,何時間も扉を背に座り込んだ。
情けない,とか,春陽の彼女への対応だとか。
心配ごとはいくつもあったけど。
無力な俺が行き着く先は,2人の身や心と,最も単純な心配だけだった。
救いたいのは誰なのか,救われたいのは誰なのか。
答えを持つ人は,いるのだろうか。
首が痛くなって扉を支柱に顔をあげた時。
数回のノックの後,俺を支える扉が開いた。



