夕日みたいな君と,時間を忘れて手を繋ぐ。



「もっと広い世界を,君は自分の目で確かめるべきだよ」



春陽くんが亀の甲羅のような布団から,ゆっくりと手を伸ばす。



「例えば君が持ってるいくつかの物は,決してただではないし,そのどれかは堤くんが自由と引き換えた努力の先に見つめていたものだったりするんだよ」


私の服の裾を,指を。

春陽くんは順番に掴んで,最後に手首を強く握った。

大事な兄ちゃんを閉め出して,物で強く塞いだ小さな世界。

君と,最後の休息を。

春陽くんへ,繰り返す1人の1日じゃ得られない,本当の安息が訪れますように。