「気づいた時には焦って,些細なことを尋ねるのも躊躇うようになって。誰も頼れなくなって。寂しいと思うより先に,すごく疲れた気がしたんだ。それが,初めて休んでしまおうと思ったきっかけだった」
沢山の苦悩の末に選んだ道は,今もなお春陽くんとその周囲を取り巻いたまま。
私という異物が混入したせいで,今は布団一枚の中だけが春陽くんの世界。
「1回,そんな理由で仮病を使ったのが多分だめだったんだ。たった1日でも,思ってた200倍気が楽で。実際,他人に強制させられることも何もなくて。適当に考えて,上がる心拍を無視して何日も休んだ。1人だけ毎朝布団を被るのは,なんだかちょっと楽しくもあったから」
うるさかったのは,きっと春陽くんの良心で,本音で。
それを無視してしまったことを,ずっと後悔していたんだろう。
自身の思う悪事は,なにも法に触れる事が全てじゃない。
アンバランスな心身に,春陽くんは自分なりに正解を探そうとして,いつしか掴めなくなってしまった。
「休む理由を答えなかったとは言え,殆んど頭ごなしな感じに怒られたらムカついたし。むくれてまた休んで怒られて,怖くて,痛い時は反撃してやろうかと思って。このあとどうしようって,贅沢に悩んでも,そうしながらゲームして。たまに行っても楽しくないし,行きたくないし」



