夕日みたいな君と,時間を忘れて手を繋ぐ。




カーテン越しの光のみの散らかった部屋,他に逃げ道がない気でもしたのか,春陽くんがベッドへ向かう。

私はその様子を黙って見つめた。

ごそごそと潜り込んで,布団を頭から被る春陽くん。

ぴたりと止まって,何も言わなくなって。

どれくらい待つことになるかななんて考える私に反省を与えるように,突如ぽつりと声を出し始めた。



「別に。最初からここにいようと思って始めた訳じゃない」



抵抗と拒否の,上ずった声。

最初で最後かもしれない彼の声を聞き逃さないように,私は物音1つ立てまいと動く布団を注視する。

春陽くんにとって最悪な休日のスタートかもしれなくても,最後まで聞き届けたいと思った。



「もうすぐ2年に上がるって時に,教師は進路の話とかうるさくなって。クラスのやつは下んないことで喧嘩したり,無駄に女子を意識したり。全部めんどくさくなってぼけっと生きてたら,いつの間にか1人になって」



何度その起点を思い出し,生活していたんだろう。

順を追って始まった春陽くんの話は,1年前にも遡った。