夕日みたいな君と,時間を忘れて手を繋ぐ。

「私,春陽くんの目にどう見える?」



身構えていた春陽くんが,怪訝そうに顔を歪めた。



「どうって?」

「来年の冬には息もしてないような,そんな人に見える? ってこと」



私は知ってる。

どんな会話をしようと,人の心は,一部の"ほんと"をかぎ分けて,無意識に同じ分だけ心を許してしまうこと。

だから私は,堤 文世に教えるつもりのないことを,彼のために限りなく春陽くんへ打ち明けてしまうことにした。

春陽くんの人生に立ち入ることを,どうか等価交換だと思って許してほしい。

すぐには答えない。

春陽くんはその頭で,突然現れた私の情報をまとめて,必死に考えている。

怖がっているようにも見えた。

開いては閉じる優しい口が,ようやく音を乗せる。



「見えない,けど。あんた……死ぬ,の?
病,気?」

「……うん,そんな感じ」



短い間にたくさんの思考をした春陽くんは,最初から私の言葉を嘘だなんて思わない。

それは,ほんとの事だからこそだったんだろうけど。

意図せずこぼすようになった私の返答に,春陽くんは絶句した。



「だから,だから恵まれてるお前はもっとちゃんとしろよって,そんなこと言いに来たわけ?」



どこか青い顔をして,それでも正面から私と向き合う。

こんな訳の分からない人間,無視したっていいはずなのに。

だから春陽くんは文世くんの弟なんだって,どこか納得してしまった。

でも,ふんわり感じ取ってるんでしょ。



「ちがうよ」