「ただいまー」



返事は、ない。



それもそのはず、今日はリュウくんが実家にお泊りに行っているのだから。



さすがに真夏の6時ではまだ日差しも強く、住人不在ですっかり暑くなった部屋に足を踏み入れて、さっそくエアコンのスイッチを入れた。



私の実家のエアコンとは違って、起動が早い。



すぐに涼しい風が私の髪を揺らしてくれる。



私はソファに座って、ほうっと息をついた。







まさかリュウくんが家にいないというのが、こんなにも私の気持ちを軽くするなんて。



まったくリュウくんに失礼な話だ。



でも別に、記憶が戻らないからっていやになったわけではないから。



たまにはひとりでのんびりしたいな、と思っただけ。



だから許してね、リュウくん。