恋の魔法は間違えないで下さい!

「ねぇそっちからなんか音しなかった?」

「風の音だよ。音葉ちゃんビビりすぎ」

「穂高くん怖くないの!?」

「怖くないって言ったら嘘になるけど、音葉ちゃんと一緒だから格好つけさせて」

そう言った穂高くんはもう十分すぎるほど格好良かった。

「ねぇ音葉ちゃん。恋バナしよっか」

「へ!?」

「気をそらせば、怖くないでしょ?」

「恋バナってどんな話するの?」

「うーん、音葉ちゃんが奏斗のこと好きになった瞬間とか?」

「そんなの覚えてないよ。気づいたら好きになってた」

「じゃあ、俺が音葉ちゃんの好きなところ言うね」

「いや、恥ずかしいよ!?」

「音葉ちゃんの好きなところはね。俺を俺として見てくれて、奏斗と比べなくて、人の良い所を探すのが上手で、いつも優しくて、笑うと可愛い所」

私はもう恥ずかしさで怖さなど忘れていた。

「音葉ちゃん。俺、きっと今魔法を解かれても、音葉ちゃんのこと好きなままだと思う」

「それくらい音葉ちゃんが大事になってる」

「いつか奏斗じゃなくて俺が好きって言わせてやる」

そう言って、穂高くんは私に手を強く握った。

もし合宿が終わって桜の魔法が解けたら、穂高くんは変わらないって言うけどどうなるんだろう。

もう話すこともなくなるのだろうか。

それが嫌だと思う自分が、おこがましくて悲しかった。

肝試しは無事に終わり、その日は疲れもあってかぐっすりと眠れた。