その噂を教えてくれたのは、弟の第2王子の
シャルルだった。


「クロエが悪役令嬢?」

「そう呼ばれています」

シャルルは俺より2学年下だ。
高等部1年の弟が知っている噂を、生徒会長で
ある俺は知らなかった。


「悪役令嬢、って……
 何年も前の流行りだろう?」

「今回で約20年振りの第3次らしいです。
 学院に平民の女子が居ると、その噂になるんですよ」


流行は20年サイクルか?
……平民の女子、俺は思い出す。
あれ、か。
優秀だと教会からの推薦で、去年貴族学院の2年生に特別編入してきた、あの女。
ブリジット・ビグロー。

『BB、って呼んでくださいねっ!』なんて、
にっこり笑って言った女だ。
その手は、初対面の俺の腕を触って……


俺が身体を引いたのと、護衛のアンドレがビグローの手を叩き落としたのは、ほぼ同時だ。


「いったーい!何するんですかぁ」

「何をだと!
 殿下の御身に触れるな!」