『…だったらなんだ』
ぼくは苛立ちを隠せなかった。
それなのに、ヤツはのうのうとぼくに話しかけてくる。
『あなたも、お亡くなりになったんですね』
…ぼくが誰だとか、死んだとか、こんなヤツに関係ない。
そう思って、ぼくは背を向けて去ろうとした。
そしたら、
『…水川繭さんやあなたに…謝りたいと思っていました…』
って言う声がかすかに聞こえたんだ。
…思わず立ち止まったよ。
それから振り向いて言ってやった。
『ゴキブリよりも醜くて低俗なお前に、謝るなんてことができるのか』
って。
そしたら、あいつ、血まみれでひれ伏して、何て言ったと思う?
…。
『私は、繭さんだけでなく、あなたの俳優人生まで奪ってしまった』
だって。
『申し訳なく思っています』
だって。
あいつは、そんなことを言ったんだ。



