ぼくの話をしようと思う





なんと…。



関係者入口の付近に、信じがたいほどの人だかり。



…朝の7時半だよ?



舞台挨拶は13時だよ?



みんなバッカじゃねえの、って唖然としちゃったよ。



若い男女からけっこうなオジサンまで、膨大な人数で入口あたりを囲んでるんだ。



生きてたときも、たしかに彼女はすごい人気だったよ。



でも、ここまでじゃなかった。



年配の人にも好感を持たれてたけど、こんな熱狂的なファンは見たことなかったんだよ。



少なくとも、ぼくはね。



彼女の口からそんな話を聞いたこともなかった。



彼女はどちらかというと、若い世代に人気で、ファッションリーダー的な存在だったから。



一体どうなってんだ、って感じでさ。






とにかく、このままじゃ彼女が来ても、ぼくに気がつくわけがない。



ぼくは、気が遠くなった。



あのときついたため息は、今までの最長記録だったね。