ぼくの話をしようと思う




だけど舞台挨拶の回の上映チケットは、売り切れだった。



そう、考えが浅いよね。



人気女優なんだから、売り切れてるに決まってるのに。



まあちょっとは予想してたけど。



でもそれはいいんだ。



映画館に入れなくても、外で待つっていう手もあるから。



彼女が現れる場所さえわかれば、儲けもんだよ。



当日は、中園さんも一緒に行くって言ってくれたし、なんか先行き明るいなーって、あの日はやけに楽観的だった。



…え?



あははっ。



たしかに、死んだばかりだってのに、能天気だよね。



ごもっとも。



でも実際、みんなそうなんじゃないのかな。



自分が死んだってことは、衝撃だよ。



だけど天国で自分の未練を果たせるなんて思いもしないもん、生きてた頃は。



だから、自分の死を嘆くよりも、まずはこの状況を喜ばなくちゃ。






で、そんなこんなで、その日の夜、ぼくは中園さんの家に泊めてもらった。



一文無しだったぼくのために、あの映画雑誌まで買ってくれて、本当に世話になりっぱなしの一日だったよ。



…でもね、結局中園さんは一緒に行けなかったんだ…。