ぼくの話をしようと思う




それで、肝心の彼女はというと―



もちろん、いたよ。



新作映画の特集が組んであった。






懐かしかったー…。



あのときのままの、弾けるような笑顔の写真。



それを見て、胸が詰まった。



目の奥が熱くなってきてさ…。



指で、こう、彼女の顔をゆっくりなぞって…。



小さい声で名前を呼んでみたりして…。



だけど、ぼくはここにいるのに、彼女はまだそれを知らないんだ。



早く会いに行きたいって気持ちが、一層強くなった。



なにがなんでも、舞台挨拶の場に行って、会わせてもらわなくちゃって思った。



だから気を取り直して、記事に目を戻した。



そしたらね、運のいいことに、3日後に最新作の舞台挨拶があるって書いてあったんだ。



中園さんがそれを読んで、めちゃくちゃ喜んでくれてさ。



若いくせに顔をしわくちゃにして、良かったなって何度も言ってくれたのが印象的だったなぁ…。