ぼくの話をしようと思う




なんと中園さんが、タッチパネルのモニターを使って、本屋の配置を調べてたんだ。



兵隊さんってことは、昭和初期の人だろ。



そんな人が、こんな機械を…って、ぼくは開いた口がふさがらなかった。



しかもぼくなんかよりも手際よくキーボードをパチパチやって、本の在庫まで調べたりするんだ。



そうやって映画雑誌をさがして、ぼくに渡してくれた。



…受け取った雑誌の表紙は、5年前に死んでしまったベテラン俳優だった。



何度か共演してお世話になってたから、彼にも会いたいと思ったよ。



ほかにも、中のページをペラペラめくると、たくさんの知ってる顔があった。



もちろん、何年も前に亡くなった人たちばかりの。



うれしいよね、なんか。



亡くなったってニュースを聞いたときは、ひたすら残念でしかなかったから。



もうあの名演技は過去の作品でしか見れないのかって思うと、さみしかったんだ。



なのに、ここでまた会えるなんて、夢のような世界だ。



まさに「天国」だよね。