甘く堕として、君に溺れて。



「アンタが相手だったら敵わないわよ、誰も」


「そんなことない......殺される......」


「......」






はあ、とため息をつかれた。


うう......わかってるよ、溜息つきたいくらいバカなのは。





「そんなん、ないと思うけど。あったら絶対、あいつは牽制しに来るわよ」


「そんなん絶対しないよぅ......」





牽制なんてしない、絶対笑ってる。

絶対、ただ逃げ回ってる私を笑ってるだけだ。


視線を動かせば、窓の外から、光が入ってきている。

換気とか言いながら、窓が全開だ。窓、前回にしても少ししか開けなくても、空気が通る量はあまり変わらないのに。

その窓から強い風が吹いてきて、髪を揺らした。


あっ......。

視界の隅に、蝶が入る。

モンシロチョウ、かな。





「はぁっ......」


「......あのねぇ」





溜息をついて、机に突っ伏した私を、真莉奈があきれたように告げた。





「分かってるんでしょ?」


「......何が」


「分からないふりしてるだけでしょ?」


「......何が」


「ホントは分かってるんでしょーに」


「......何が」


「彼が、本気だってこと」


「......」