「......あ、藤堂くん。おはようございます」
そう声をかける。
朝の光に揺られ、木々がきらめく。
「ああ、おはよう。双池さん」
返事を返され、私は彼から離れるように足を動かした。
......彼は、お隣さん。
同じ学校なんだけれど、......彼は異常。
学校では、アイドル並みに人気がある。
私は、そんな彼がちょっとばかし、苦手で。
関わりたくなかった。
関わりを持たないようにしていたのに......。
「......和乃、」
「わ...わわ、......私っ。先学校行きますねごめんなさいっ」
一方的にそう言って、私は速足で、というかもう走り出した。
......私たちは今、複雑な関係にあるのだ。
そして、私と、このファンクラブまであるような人気者様が一緒に話していたら、命を狙われる。
死亡フラグは回避したいのだけど、女の恨みは恐ろしいということを。
この余計な人気者は、まったく理解していなかった。
変わっていく視界に映る景色は、やっぱりいつもとあまり変わらない。

