そう、耳元でささやかれた瞬間———
———ダンッ!
「......かっ、ど......、え......」
(叶っ、どうして、え?)と言おうとしたことが言葉にならなかったのである。
どうして、ここに。
うわの空で、何となく、そんなことを思う。
「......雑魚が。和乃に触れるな。虫唾が走る」
ふわ、と髪が揺れた。
彼のきれいな髪が、風に揺れてきらめく。
そのきらめきに目を奪われた、その一瞬の間で。
銃を持っていた、黒服の男は、倒れ伏していた。
え......。どうやって、こんな一瞬で.....。
毎回毎回、そう思ってしまう。
「ちょっと待ってて。すぐに終わらせる」
優しくそう言われて、こくんとうなずく。
かと思えば。
ガっ、とその男を踏みつけている姿が見えた。
か、......叶ええええええええええええええええええええっ!?
心の中で思いっきり叫ぶ。ふみつけ......踏みつけ!?
「叶、......叶、何して......。っ!」
名前を呼んで止めようとしていると、激痛が走った。
視界がかすむ。
———あ......。
意識が薄れていく。
その中で、叶が近づいてきて、体がふわ、と持ち上がる感覚がした。

