「こいつは死にたがってた。だから殺してやったんだ」


毅はそう言うとトイレの床に倒れ込んだ由香里の死体を見下ろした。


由香里の手首には無数の傷跡が残っているけれど、それはすべて生きるために行ったものだと、誰もが理解していたはずだ。


本当に死にたいのなら、もっと深く傷をつける。


それでも結も明日香も毅の言い分になにも反論できなかった。


このメンバーの中で自分が生き残るために誰かを殺せと言われれば、自分もきっと由香里を狙うだろうと心のどこかで思っていたからだ。


呆然として由香里の死体を見つめていると、他の足音が聞こえてきて視線を向けた。


「由香里いた?」


その声は美幸だ。


毅がハッとしたように目を大きく見開き「いたけど、入ってくるな!」と、怒鳴った。


足音が女子トイレの手前で止まる。


「毅? どうして女子トイレにいるの?」


そう聞いたのは静だ。