「ない!!」


いざ集金袋を職員室へ持っていく段階になって、生徒会長が全員に聞こえるように叫んだのだ。


もちろん、その場にいた全員の視線が生徒会長へ向かう。


由香里もなにごとかと視線を向けた。


「どうしたの?」


生徒会長と仲のいい女子生徒がすぐに駆け寄って訊ねた。


「集金袋がないの! カバンに入れておいたのに!」


大金がなくなったことで由香里は目を見開いた。


「ちゃんとカバンに入れておいたの?」


「入れたよ! ねぇ、みんな探すのを手伝って!」


思えばこのとき生徒会長も他の生徒たちも微かな笑みを口元に浮かべていた。


それに200万円もの大金がなくなったというのに、真っ先に先生に知らせようとする生徒は誰もいなかったのだ。


この時に気がつけばよかった。