由香里は飯沢高校に2年生の頃転入してきた生徒だった。


前の学校では成績もよく友人もたくさんいた。


そのため父親の転勤についていくと言う話になっても由香里はそれほど思いつめた様子を見せていなかった。


新しい学校でもきっとすぐに友達ができる。


そう思っていたし、成績のいい由香里の転入試験はすぐにパスした。


「ごめんな、お父さんの都合に突き合わせて」


引越し先へ向かう車の中で父親は運転しながら何度も同じことを口にした。


「大丈夫だって! どんな学校か楽しみ!」


由香里は笑顔でそう答えた。


知らない土地で暮らすことは不安もあるけれど、半分以上が楽しみなことだらけだった。


新しい友人に行ったことのない遊び場。


それに素敵な男の子だっているかもしれない。


由香里の想像が大きく膨らむばかりで、そんな由香里を見て両親も安心して居た様子だった。


だけど、いざ転入してみるとことはそう簡単には運ばないということがわかっていた。


「はじめまして! よろしくお願いします!」


元気よく挨拶する由香里に、クラスメートになった2年E組の生徒たちはみんな拍手で迎えてくれた。