元に今日の勉強は集中なんてできなかった。


「電話もつながらないから、救助がくるかどうかもわからない。でも、ここは元々宿泊施設だし、設備はちゃんと整っている。今は外には出られないが、天候回復が回復すればすぐにでも下山できるから心配しないように」


生徒たちの不安を少しでも払拭しようとしているのが伺えるけれど、門の前には大木が倒れているといっていたはずだ。


それでも、下山できるんだろうか?


結の胸に一抹の不安がよぎるけれど、それを口に出すことはなかった。


きっと施設内にチェンソーなどの道具くらいはあるんだろう。


それで木を切って道を作れば下山できる。


「それから、明日の勉強についてだけど――」


先生がそこまで言った時だった。


きちんと閉められていたはずの教室のドアが薄く開き、そこからロープが入ってきたのだ。


ロープはにゅるにゅるとまるでヘビのようにのたうち、ひとりでに先生に近づいていく。


教卓の近くにいた由香里と匠のふたりが思わず腰を浮かして後ずさりをした。


「なんだそれ?」


まぬけな声で質問したのは毅だった。