「やっぱり電波はねぇか……」


毅がスマホを取り出して電波を確認し、ため息を吐き出す。


ここまで降りてきても電波がないということは、やっぱり電波塔に異常が出ているんだろう。


とにかくもう少しで民家が見えてくるはずだ。


そうすれば助けを呼んでもらうことができる。


結の足取りが強くなったその時だった。


ポケットに入れていたスマホが鳴り始めて飛び上がるほどに驚いた。


その場に立ち止まり、画面を確認する。


いつの間にか毅が隣に並んでいて、その画面を覗き込んでいた。


結のスマホも電波がない状態だが、メールが一件届いていた。


スマホを持つ手が自然と震える。


雨に打たれた寒さのせいじゃないことは、もうわかっていた。


「開けよ」


促されなくてもメールの確認はするつもりだった。