☆☆☆

大河が死んだ。


まだもう少し猶予があったはずなのに……!


雨が降りしきる中結の心は絶望に支配されていた。


前を歩いている毅とはぐれないようにどうにかついて行っているけれど、それだけだ。


足をすべられて1度こければ、もう立ち上がることはできないだろう。


「少し道が良くなってきたな」


毅の呟きで、ようやく道がアスファルトに変わっていることに気がついた。


もうすぐで街が見えてくるころだ。


自分がすでにここまで下山してきていたことに驚き、道を振り返る。


さっき乗り越えてきたばかりだと思っていた大木は、とっくに見えなくなっていた。


山が背後に遠ざかっていく度に雨音も優しくなっていく。