「ねぇ、哲也の戻りが遅くない」


色々と考えながら進んでいると結が後ろから声をかけてきた。


唯一女の中で生き残った結は運がいいとしか言えない。


いつ身代わりに殺されてもおかしくなかったはずだ。


「そういえばそうだな」


振り向いてみるともう随分と歩いてきたことがわかり、哲也が山へ入っていった場所はとっくに見えなくなっていた。


ゆっくり下山していたつもりが、つい足早になってしまっていたみたいだ。


「待ってみる?」


結の言葉に毅は一瞬顔をしかめた。


雨脚は強いままだし、できれば立ち止まりたくない。


立ち止まってしまえば疲労を感じて、二度と動けなくなってしまいそうで怖かった。