確かに風などで乱暴に倒されるよりも、元々横にして置いておいたほうが自転車が傷つく心配はないわけだ。


だけどそういう止め方をしているせいで、屋根の下に停められない自転車が多数ある。


これで雨でも降り出したら、自転車が錆びて使い物にならなくなってしまう。


ふたりは倒してある自転車を起こし、斜めに停められている自転車を直し、そして屋根の外に置かれている自転車を定位置へと戻した。


「これでよし、と」


すべての作業が終わったときには午後の授業が始まる10分前になってしまっていた。


ふたりして大急ぎで教室へ戻る。


その途中で明日香がふいに笑い始めたのだ。


「なにがおかしいんだ?」


階段の途中で立ち止まり、振り返る。


「ううん。なんかこういうのって青春映画に出てきそうだなって思って」


そう答えながらまだ笑っている。


「遅刻しそうになって走るシーン?」


うんうんと明日香は頷く。


そう言われればありそうなシーンかもしれない。


「じゃあ、このままふたりでサボるシーンはある?」