小学校時代、静と由香里のふたりは同じクラスメートとして仲が良かった。


最初は席が近くになったことでなんとなく会話するようになり、徐々に距離が縮まっていって休日はふたりで遊びに出かけることも多かった。


しかし、由香里は中学入学前に親の都合によって転校してしまった。


それから互いに新しい友人ができて、だんだんとその存在を忘れるようになってきた。


高校に入学してからも静が由香里を思い出すことはなかったのだけれど、2年生のある日転入生がやってきた。


それが由香里だったのだ。


驚いた静だったけれど、また小学生の頃のように楽しい日々が戻ってくるのだと思っていた。


けれど、そうはいかなかった。


由香里はイジメのターゲットになり、静はそれを止めることもできずに傍観していた。


「由香里ってほんとトロくさいよね」


美幸にそう言われると「だよねぇ」と相づちを打ってしまう。


最初はそんな自分を嫌だと感じていた静だったけれど、だんだんと感情が麻痺するようになってきた。


私も由香里ももう小学生ではない。


自分の身は自分で守らないといけない。