静は雨に濡れながらそっとそちらへ足をすすめる。


一体そこに誰がいるんだろう。


近づくにつれて自分の鼓動が早くなっていくのを感じる。


これから自分の代わりに死ぬ人と対面するのだ。


それは明日香か結か、豊か大河の誰かに違いない。


さすがに静の親友である美幸はいないはずだ。


美幸とはついさっきまで一緒にいたし、屋上へ呼び出されたなんて言っていなかった。


「ねぇ、どこにいるの?」


近づいてみても誰の姿も見えなくて、ただフェンスが立っているだけだ。


フェンスから少し身を乗り出して下を確認してみても、グラウンドに誰かが落ちたような形跡はない。


「とにかく殺せばいいんだろ?」


毅の声が後方から聞こえてきた次の瞬間、静の体が持ち上げられていた。


咄嗟のことで悲鳴も挙げられずに目を見開く。


「助ける方法までは聞いてなかったもんな」