施設の屋上に出てきたのはこれが始めてだった。


屋上には腰までの高さのフェンスと、色の禿げたベンチが設置されている。


天気が良ければここで食事もできたことだろう。


雨は相変わらず振り続けていて、バチバチとコンクリートに叩きつけられる音が響いている。


こんなところに人がいるんだろうか?


そして呼び出された人は誰だろう?


傘も持たずにやってきた静は周囲を見回す。


しかし暗闇が広がるばかりで誰の姿も見えない。


せめて明かりがあればわかるのに。


そう思ったとき静の後方で屋上へのドアが閉まる音がした。


振り向くと哲也と毅のふたりが傘を差して立っている。


「どこにいるの?」


小声で聞くと哲也が無言で遠くのフェンスを指差した。


そこ闇に包み込まれていて、近づいていかないと何も見えない。