匠へのパスが通らずに何度も得点を入れそびれたことが敗因だった。


だから参加したくなかったのに。


心の中でグチグチと文句を言いながら着替えているところに毅と哲也のふたりがやってきた。


ふたりは学年内でも激しい気性の持ち主だとわかっていたから、匠は決して関わろうとはしてこなかった。


「よぉ匠くん。今日はどうしたんだよ、体育に出席なんてしてさぁ」


絡みつくように声をかけてきた毅に匠は引きつった笑みを浮かべる。


「た、担任の先生に見つかって、参加させられたんだ」


あくまでも自分の意思で参加したんじゃないと伝えたつもりだった。


担任にバレたせいだと。


しかしふたりは匠を取り囲み、匠のせいで試合に負けたのだと詰り始めた。


匠もそれは否定できない立場にあったけれど、授業の試合なんてふたりにとってはどうでもいいことのはずだった。


ただ、いいカモを見つけた。


それだけのことだったのだ。


この日から匠イジメは開始された。