毅が声をかけても哲也には届かない。


ジッと匠を見つめる目は充血していて、呼吸が荒くなっている。


「僕を殺す?」


匠が哲也に気がついて笑うのをやめた。


持っている包丁にも気がついているが、その顔には笑顔が張り付いたままだ。


「今日殺されるか、明日殺されるか。僕はずっとそう考えて生きてきた」


「黙れ!!」


哲也が包丁を振り上げる。


「やめろ!!」


「それは、今日だったんだ」


大河と匠の声が重なりあう。


そして哲也が匠の胸に包丁を突き立てるのが同時に起こった。


駆け寄ろうとしていた大河がその場で動きを止めて目を見開く。


匠が自分の胸に突き刺さった包丁へ視線を向け、そして口の端から血を流した。


哲也は肩で呼吸を繰り返して、その場に座り込んでしまった。


その数秒後、食堂内に悲鳴が響き渡ったのだった。