いくら山道といっても真夏の真っ昼間に歩いていると汗が吹き出してくる。


鼓膜に容赦なく突き刺さるセミの声とうだるような暑さにバスから降りたばかりの10人はすでにへとへとだった。


「いつまで歩くんだよ!」


先生の真後ろをついて歩いていた杉山毅(スギヤマ ツヨシ)が不服そうな声を上げる。


「もう少しだから、頑張れ」


担任の矢沢先生が一旦生徒たちへ振り向いてそう声をかける。


その先生の額にも汗がにじみ出てきている。


先生の隣にはさっきまでバスの運転をしてくれていて、運転手さんが並んで歩いている。


最初に自己紹介されたのだけれど、忘れてしまった。


「ねぇ、まだ歩くの?」


毅と同じような質問を呟く程度の声で言ったのは渡辺明日香(ワタナベ アスカ)だ。


明日香は大きな声で文句を言うことはできないが、誰かの言葉にのっかって文句を言うタイプだ。


「あと少しだって、先生言ってたじゃないか」


そんな明日香をなだめたのは古瀬豊(フルセ ユタカ)だ。