いやいやいや、いくら何でもやり過ぎよ私。馬鹿なんじゃない?

 確かに殿下を取られたのは悔しかったし、悲しかった。でも、そこまでする必要は絶対なかったって今なら分かる。

「もしかして私、巷で話題の恋愛小説に出てくる悪役令嬢になっていたんじゃ……」

 ヒロインのライバル役であり、大半は読者からの嫌われ者。愛するヒロイン達の恋をズタズタにしようとするが、最後には断罪される。そのクライマックスが読者からの期待が最も高いシーンで、私が何度も歩んできた道そのもの。

 第三者の目から見て見れば、私はずっと殿下の恋路を邪魔してきている悪役令嬢そのポジションに立っている。

 ――そうか、だから私……愛されなかったんだ。

 どれだけ頑張って努力しても、殿下の目に映るのはヒロインのサラで、悪役令嬢の私は近づくことすら許されなかった。それが変えられない運命で、現実だったんだ。

「ただ……大好きな気持ちは本物だった」

 心の中にはいつも殿下が居て、彼に釣り合おうと頑張っていたはずが、いつしかいらぬ所ばかりに力を注いで優越感に浸っていた。可愛げのない私なんかを、好きになってもらえるはずがない。

 なら全ての記憶がある今回の人生はどう歩むのが正解か。

 答えはそう――簡単だ。

「十三回目の人生、殿下の恋路を邪魔しない。そして死なない!」

 殿下もサラも、そして私も幸せになる人生。これしかない。

 再び日記に視線を戻して、過去の記憶を繋ぎ合わせながら今後の計画を練り始める。

 あれだけ最期を迎える日の空はいつも淀んでいたというのに、今回の始まった十三回目の人生の空は眩しい太陽の光が降り注ぐ青空で、私の気持ちも晴れ渡っていた。