目を見開いたままの私を見て、侍女達は感動しているものだと勘違いしているに違いない。

 違うのよ。だって、このドレスを頂いたのはだって……!

 ドレスに似合う装飾品を探しに行った侍女達に、ばれないよう自室の机の引き出しの底に隠してある日記を取り出した。

「やっぱり、過去に戻っているんだわ」

 日記の最後に書かれている日付は、私が婚約破棄と死刑を言い渡された日から二年前。婚姻式を迎えるのが丁度二十歳を迎える日だったから、つまり十八歳の頃に戻っている。

 瞬く琥珀色の瞳の色は一緒でも鏡に映る顔はまだあどけなさが残っているし、見慣れた長いワインレッドの艶やかな髪も少し短い気がする。

 再び日記へと視線を戻して、書かれた内容を読み込んでいると大量の記憶が流れてきた。

 これまでの……重ねてきた記憶が。

「私、死んだのこれが初めてじゃない。同じことを何度も繰り返してる……」

 記憶を数える事、十二回。

 私が同じ過ちを繰り返し、殿下に首を刎ねられて死んでいる。間違いない、私これで十三回目の人生だ。

 冷静になって考えると、私色々とヤバい事をしてきている気がする。しかもそれを何度も繰り返しているのよ?

 殿下のことで盲目になった挙句、殿下に近づいた聖女であるサラに対して数々の嫌がらせをしてきた。

 物を隠したり、陰口を言ったり、舞踏会に参加してきた彼女のドレスに飲み物をわざとかけてみたりと、最初はまだ可愛らしいものだったかもしれない。

 でもそれはいつしか加速して、命を奪おうと猛毒にまで手を伸ばした……。