遊木くんの様子がおかしい




……手汗がすごい。

平静を装って鏡覗いてるけど、スマホを持ってそばに立つ遊木くんがじーーっと私を見つめててドキドキが治まらない。


ていうかまつ毛どこにも無いんだけど…。

あれ?

それ以前にいつの間にか瞬きしても目が痛くなくなってる!?




「取れた?」


「…多分取れた、と思う。なんか痛くなくなった」


「どれどれ」




そう言うと、遊木くんはぐっと顔を近付けてきて私の目のを覗き込んだ。


あまりの顔の近さに私は思わず息を止めてしまう。

だって、私が背伸びでもすればキスできちゃうくらい近いんだもん!


そんな風に内心パニックを起こす中、

「どれどれ」って、さっき恵美も言ってたな…なんて冷静に考える自分もいる。




「無いな」


「……無いよね…」




無いんだよね? 確認したんだよね?

なのにまだ顔が近い。


出来る限り息を吐かないように喋ったら、不自然過ぎて余計に恥ずかしくなった。



……どうしよう。


周りは暗いけど、スマホで照らされてるから絶対顔赤いのバレてるよね。

いや、逆に白飛びして分かんないかな?




「迷い人をご案内しま〜〜す…」




と、そこで聞こえてきた恵美の声。

これはお客さんが来たことをお化け役に知らせる為の合図だ!



パッと私は遊木くんから離れて、「ありがと遊木くん! じゃ、戻ります!」と言い残して逃げるようにその場を後にした。



…やっと息が出来る。

はあぁ…ドキドキしたぁ……。



遊木くんってほんと距離感おかしいよ。

しかも表情一つ変えずにあんな近付けるんだから、大したもんだ。


私なんてもう汗かき過ぎてるし緊張しまくって手が震えてるよ。



……はぁ。

なんか、こんな風にドキドキしてるのが私だけっていうのが辛く感じるな……。