「……」



ハイタッチの手を上げたまま、口角を上げる遊木くん。

そして、スタスタと私に向かって歩いてきたのだ。




えっ。



うそ、私もハイタッチするの…!?

だってこっち来てるもんね…!?


えっと、手出してたらいいかな。



私はドキドキしながら遊木くんと同じように両手を上げてハイタッチを待つ。



そして目の前に来た遊木くんはハイタッチをする


――寸前で、ぎゅっと拳を握ってみせた。





「ファイトッ☆」




さっきまでハイタッチの準備をしてた手を下げてファイティングポーズを作った遊木くんは、ニコッと爽やかに笑ってそんな風に言う。


そして、行き場のない手をそのままにして固まっている私なんて気にせず

くるりと振り返って男子グループの方へ戻って行ってしまった。




「…………」


「……ブッ」




隣で吹き出したのは恵美で

私はゆっくりと彼女に顔を向ける。




「ごめんごめん、さすがに面白くて」


「……今の何」


「あはは、こっちが聞きたいよ」




…完全にしてやられちゃったんだけど。

見てた人皆笑ってるし、めちゃくちゃ恥ずかしい。




「ちょ、遊木何してんの」
三島(みしま)さんビックリしてんぞ」




男子グループの方からもそんな笑い声が聞こえてきて、更に恥ずかしくなる。


当の本人はケラケラと笑いながら「どっこいしょ〜」なんて声を上げていて。


……一体彼はどういうつもりなんだろうか。