「三島さん」
聞き慣れない男子の声にハッと振り返ると
そこにはなんと鹿野くんがいた。
彼の後方には男子が2人いて、遠くからチラチラとこちらを見ている。
恐らく鹿野くんの友達だ。
……いや、ていうかなんで鹿野くんが?
「は、はい」
「ごめん急に話し掛けて。
……俺、分かる?」
「えっ分かるよ! 2組の鹿野くんだよね?」
「あ、良かった。そう、鹿野です」
爽やかな笑顔を向けてくれる鹿野くんに、一気に緊張が解かれる。
何言われるんだろうって思って身構えたけど、普通に話し掛けてくれただけかな。
「三島さんのクラス、皆仲良いよね」
「あーやっぱりそう思う? 私も今日実感してたとこ」
「いいなぁ。俺も1組が良かった」
「あはは、そんなに? 2組は仲良くないの?」
「普通かな。悪くはないけど、1組ほどじゃない」
そっかそっか。
まあそうだよね。
うちのクラスが仲良いのは、あの男子グループが楽しい空気を作ってくれてるからだと思う。
「…ていうかさ、さっき大玉転がしの時三島さん出てたよね?」
「え? あ、うん」
「転びそうになってたメンバー助けてたの、見てたよ」
鹿野くんの優しい笑顔に、私はかああっと顔を赤くさせる。
……嘘。
一瞬の出来事だったから、まさか誰かが見てるなんて思わなかった…。


