「むしろ俺としてはラッキー」




そう言った彼は、いつもの可愛い笑顔を見せてくれる。


……え? ラッキー?




「なんで?」


「これのおかげで三島に話し掛けられた」




猫みたいな可愛らしさでそんなことを平然と話す虎くん。


私は言葉の意味を脳で理解しながら、みるみる顔が熱くなっていくのを感じて。




「……そ、それがラッキーなの?」


「うん」


「……っ」


「あ、羨ましいなら三島も手の甲に『遊木』って書いてあげようか?」


「えっ、いや…それは遠慮しとく」




そんなの恥ずかしさとドキドキでたまったもんじゃない。



ていうかそうなことはどうでもよくて!

私に話し掛けられて“ラッキー”って言っちゃう遊木くんよ!


ねぇ、何それ!

嬉しいんだけど!!?




「(あーにやける…)」


「そういや三島って意外とドッジ上手くてびっくりした」


「へ?」


「逃げるの。最後の方まで残ってたし」




あぁ、確かに残ってはいたけど…。


上手いというか、今回はたまたまというか。

危なかった時も何回かあったし。




「…あ、そういえば遊木くん。笑顔でボール投げてくるの怖かったんだけど!」


「そう?」




そう? じゃないわ!

怖いでしょあんなの!