――…



英語の授業にて。


私は思わず「あっ」と声を出しそうになった。



……しまった、筆箱忘れた。



休み時間中に気付いてれば恵美に借りれたのに……やらかした。


どうしよう、今日小テストあるのに…。


……誰かに借りなきゃ。



そう思いつつ、私はチラッと隣の遊木くんの方へ顔を向けた。




「…?」




私に気付いた遊木くんはきょとんとして顔を合わせてくれる。


……男子だけど、ここで頼っても変じゃないよね。

むしろこれが話せる良いキッカケだと思おう。




「あの…筆箱忘れちゃって…。
ごめん、なんでもいいからペン貸してもらえないかな?」


「あ、そーなん? いいよー」




遊木くんは嫌な顔一つせず快諾してくれた。

ゴソゴソと筆箱からペンを探る遊木くんに、私は何度も小声で感謝を伝える。


よかったぁ。

この授業終わったらちゃんとお礼言おう。




「はい」




そして遊木くんからペンを差し出され、私は「ありがとう」と頭を下げてそれを受け取った。



シャーペンかな。

……それにしてもなんか太い…――




「……え」




手に取ったペンを見つめたまま、私は思わず小さな声を漏らす。


貸してくれたそのペンは

まさかの『筆ペン』だった。