私は渡り廊下に設置された自販機の前でうーんと悩み込む。



…どうしようかな。

やっぱりこれかな。



すっと指を伸ばしポチッとボタンを押した

その瞬間。




「わ!!」




突然背後から大きな声が聞こえてきて、私は肩を跳ねさせる。


……びっっくりした。

こんなことするのは……1人しかいない。




「…遊木くん…」


「それ美味いの?」




睨みながら振り返ると、遊木くんはケロッとした顔で自販機の方を見ていた。

周りにいつもの男子達はいなくて、どうやら遊木くん1人でジュースを買いに来たようだった。


私は自販機から買ったばかりの“ほうじ茶ラテ”を取り出す。




「うん。私は好き」


「へー」


「飲んでみたら?」


「んー…そうしよっかな」




そう言って本当にほうじ茶ラテを買おうとする遊木くん。


軽い気持ちで提案したけど

まさか本当に買っちゃうとは。




「お、美味しくなかったらごめん…」


「いいよ自分で買ったし。
口に合わなかったら三島のこと呪うわ」


「…えっ、めちゃくちゃ根に持つじゃん!?」


「あはは」




きゅっと目を細めて笑う遊木くんはご満悦そうで。


……なんか、最近は私もツッコめるようになってきたし、こういうやり取りがちょっと楽しく思えてきてる。