掃除を終えた頃には教室内から生徒はすっかりいなくなっていて。

私も鞄を持って静かな廊下を歩き始めた。



お腹減ったなぁ…。

帰りに何か買って帰ろうかな。




「あ、三島」




と、

不意に私を呼ぶ声が聞こえて

私は足を止めて振り返った。




「……え、遊木くん?」




パタパタとこちらへ駆け寄って来るのは正しくも遊木くんだった。


…あれ?

帰ったんじゃなかったの?




「良かった、まだいた」


「…どうかしたの?」


「今からちょっと時間ある?」


「……へ?」




じーっと見つめられて、心臓がドキドキと鳴り始める。


な、何……?




「あるけど……」


「良かった! じゃあ、ちょっとこっち来て」




え、え、

ほんとに何??


一体どこに行く気?



なんだかそわそわしながら、私はスタスタ歩く遊木くんの後を追いかけた。



しばらく歩いて着いた先は、なんと理科準備室で。


彼は何も説明せず、私と一緒に中へと入ってしまう。




「…えっと…」


「急に呼び出してごめんな」




パタンと扉を閉められて

私の緊張はピークに達する。



……この状況って…

もしかして……もしかする?



だってだって!


放課後

急な呼び出し

人が来ない理科準備室


……こんなの、よく漫画であるやつじゃん。




“実は遊木くん、宇紗子のこと好きだったりして”




…まさか……本当に…?




「あのさ…」


「……っ」




「これ、手伝ってくんない?」




そう言って遊木くんは

テーブルに置かれたプリントを指差した。