ひだまりで誓う桜色の愛

目を細めて話す入院服姿のおばあさん。


許可なく外出って……それ、アウトなんじゃ……。今頃看護師さん、血眼になって捜してると思います。

そう注意したいけど、相手が年配の人というのもあり、なかなか言い出せない。


気持ちはめちゃくちゃわかる。私も過去に似たようなことをしでかしたから。

でも、せめて一言言って出てきたほうが良かったんじゃないかな……。



「白昼堂々抜け出すなんて……おばあさん、やり手ですねぇ」



まごついていると、沢村くんが口を開いた。



「一体どんな手を使ったんですか?」

「あら、気になる?」

「はい。看護師さんが多いあの病院で脱走を図るなんて、相当頭が切れないとできませんから。抜け道があるんですか?」

「ううん。巡回が緩い場所と時間帯があるのよ」

「そうなんですか⁉ 把握してるなんてすごいですね! なんだか常習犯みたい」

「あらやだ。バレちゃった」



笑い合う彼らを棒立ちで眺める。


おばあさんの戦略もすごいけど、自然に口を割らせた沢村くんの話術もすごい。

これもご両親の教育なのかな。もしそうだとしたら、先生もかなりのやり手じゃない?

優秀なのに、ひけらかさない。人気なのも納得だ。