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「おい、美宙! 早くこっち来い!」
 私、赤西(あかにし)美宙(みそら)は目の前の男に苛立っていた。
 私の通う私立花ヶ崎(はながさき)学園は、アイドルとマネージャーを育成する男女共学校だ。私はマネージャー科の三年生。
「美遥が! 覚えてないのが、悪いんしょ!」
 コイツは、蒼山(あおやま)美遥(みはる)。一応、アイドルである。同世代のアイドル界では知らない人はいないくらいに人気がある。ムカつくけど。
 そんな学校に、通うことになったのは……社長命令だ。
 美遥の所属する事務所・芸能プロダクションAKANISHIは私の父が経営する会社だ。そこに美遥が入ることになり、娘の私は監視役で通うことになってしまった。
「は? マネージャーなんだから、スケジュール管理は普通だろ? 美子さんならそんなことで怒んねーし、先回りする」
「すみませんね! お母さんみたいに出来んくて!」
 コイツが言う美子さんとは、私の母のことだ。母は、AKANISHIで働いている敏腕マネージャーでありもう引退してしまった有名歌手のマネージャーをしていた。
 なぜそのことをコイツが知っているのかというとその有名歌手はコイツの母親であり、コイツ自身のチーフマネージャーでもあるからだ。
 本当に、生意気でムカつく奴だ!
「みーそらちゃん!」
「あ、ハヤトくん。もうレッスン終わったの?」
「うん、そうだよーレッスン室から戻ってきたら美宙ちゃんと美遥が見えてさー」
 ハヤトというのは、里山(さとやま)隼人(はやと)という名前で美遥と同じグループのアイドルだ。
「そうなんだ、お疲れ様。ハヤトくん」
「ありがと。もう少しでシュンとユウキも来るよ」
 ハヤトくんにそう言えば、また扉が開いてまた男の子二人が入ってくる。