こうして、俺はバイト先のコンビニで100万円持って現れた超がつくほど不器用なお嬢様と本物の恋人になった。


富裕層の人達は金に困らない生活をしていて羨ましいなと思っていたけど、人生金が全てじゃない。
俺と沙耶香は生まれや育ちや価値観も違うけど、二人とも感情のある人間だ。

小さな喜びも大きな幸せに変えてくれるロボット彼女の沙耶香。


いや、もうロボットじゃない。


喜びも、
怒りも、
哀しみも、
楽しみも。

契約満了日には、全て曝け出せるほど感情溢れる人間に育っていた。
彼女の努力と成長を隣で見届けてきた俺は、人生最高の幸せを手に入れた。


でも、困った事に……。



「颯斗さん、沙耶香にもう一回キスしてくれませんか。……一万円で」



俺が散々甘やかしてしまったせいか、どうやら悪い癖だけが残っているようだ。




【完】